ガラスが風船のように膨らんで弾けた

 台風進路の右側は風が強い。
 北半球では、低気圧の中心に吹き込む風は左渦巻きなので台風の進行速度が加わった風速になり、左側では引き算した風速になる。

 台風15号は三浦半島を一跨ぎして東京湾を北上、千葉市西方に上陸した。

  9月9日午前2時夜半、家の周りがザワザワ騒がしいので目が覚めて、パソコンをスイッチオン、「お気に入り」から「気象レーダー・ナウキャスト」画像を引きだした。

 ちょうど台風の目に入ったところで、ほら、目の上端にわが家が見えるでしょう、写ってるわけないだろ!

 ほどなく家の周囲が静かになったので、そのまままた寝入ってしまった。
 そのころ東京湾の向こう岸、房総半島では誰もが想像したことのないような風害が吹き荒れていたことは、皆さんの記憶に生々しいところだろう。
《森田健作知事は9日は登庁せず、公舎で終日、「情報収集していた」という。》(朝日新聞デジタル>記事 2019年9月29日05時00分)
 危機管理意識ゼロ、弁解するだけ品格が下がることに気づかない地方〔自治体〕政治家。
 その点、《自民党の二階俊博幹事長は13日、台風19号の被害を受けて開いた党の緊急役員会のあいさつで、「予測されて色々言われていたことから比べると、まずまずで収まったという感じだ」と語った。》(朝日新聞デジタル>記事 2019年10月14日05時00分)
 ね、自民党の大物になると上から目線の、天下を見くだす目の高さが違うでしょ。
 19号は蓋を開けてみればとんでもない雨台風になるのだが、気象庁狼少年村(元気象庁予報部)の前日警告によれば、15号以上の強い風台風になるという感じであった。
 わたしは、19号は15号のちょっと西側を狙っていると判断、当日の夕刻までには、湘南海岸全域に竹矢来を結んで、「いざ来いニミッツ、マッカーサー!」(西條八十作詞『比島血戦の歌』)、万全の防御態勢を敷いて晩酌を始めた。 
 ところが敵は卑怯にも石廊崎西方から伊豆半島に侵入、相模湾に下りないで西湘から神奈川県を串刺し、北北東へと抜けて行った。


 19:40といえばすでに第1次宴会は終わり、さて第2次は何を肴にしようかと台所に行ってガス台の前に立っていた。場所は掃き出し窓から1メートルの位置である。
 第三者から見ればすでに十分ボーッとしているところだろうが、本人は観察力・判断力ともにしゃきっとしている積もりである。
 ゆさっと、家全体が揺らいで風圧がかかったなと感じて、窓のほうに目をやったとき、空気の固まりが隣家の屋根から下りてきたような感じがして、窓ガラスが内側に風船のように膨らんだように見えた瞬間、バリンと室内に飛び散った。
 何か硬いものが飛んできたのかなと調べてみたが、外側の網戸にはなんの損傷もない。
 雨に濡れて水の膜になった網戸とガラスの隙間に強風が吹きこんで膨らんだとき、網戸全体の水の吸着力の総和がガラスの張力を上回ったということだろうか。
 掃き出しの窓の下半分だから、83×75センチの曇りガラス、上端に直径60センチほどの穴が空いている(これは翌朝、明るくなってからの写真です)。

 足許に掌大のガラス片が4〜5枚、落ちている。
 おもしろい現象を観察できたと思ったがこうしちゃいられない。すぐにガスを消して仕事場兼宴会場に行ってパソコンで「気象レーダー・ナウキャスト」画像を引きだす。
 すでに台風の目は消えており、オレンジと深紅の帯がわが家から数十キロ北西の地点を中心に渦巻いていた。

「なんだ、もう通り過ぎたところか。雨雲もなくなった、これからは西風だな」
 これで雨の吹き込みの心配もなし、ガラス片などの片付けは明るくなってやればいいやと、宴会をほどなく再開して滞りなく終わり、一寝入りして、さて翌朝。
 腰より高い位置にある流しにマッチ棒大のガラス片があるのに気づいた。台所の反対側にある冷蔵庫の前にも鉛筆大が2〜3片落ちている。歩くとスリッパの裏がジャリジャリするのでひっくり返してみると、スリッパの裏に小枝のようなガラス片が何本も突き刺さっているではないか。ここでようやく、あのガラス破裂の規模と実態が判明したのである。
 この貴重な観察結果を、翌朝道路掃除しながら近所の人に喋り、メールで言いふらしたところ、怪我はなかったかと、多くの人からお見舞いをいただいた。

 さてそこで気づいたのだが、わたくしこの十数年、痛さとか寒さを感じたことがない。夏の暑さは汗が出るので分かる。加齢とともに皮膚感覚が鈍くなっているのだろうか。
 急いで調べて見たが、痛いところも血が出ているところもない。
 化膿でもしたら面倒だと、改めて入念に目視で観察し、さらに見えないところは撫で回したが、まったくの無傷である。
 あのとき飛散するガラス片のコースを見極めながら避けたという記憶もない。おいそれと追試もできずガラス飛散の謎は残る。残念だ。
 被災地に広がる未確認情報によると、このオジサン、

気象庁狼少年村の村長さんに天下りなさるとか。
 これからは災害の実情に合わせた気象予報に書き換えて閣議決定とするので、公文書のうえでは行政の不備・怠慢は起こりえないそうだ。めでたしめでたし。