遠路はるばる、背戸峨廊のご褒美

 磐越東線(ゆうゆうあぶくまライン)江田駅は遠い。
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■六会日大前 07:09発小田急江ノ島線◇藤沢[5分待ち]東海道本線◇上野[4分待ち]常磐線◇水戸[42分待ち]常磐線◇いわき[36分待ち]磐越東線13:32江田着
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  所要時間6時間23分である。
 在来線特急を利用すればどうか。
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■六会日大前08:50発小田急江ノ島線◇藤沢[3分待ち]東海道本線(東日本)◇品川 [6分待ち]ひたち7号◇いわき[66分待ち]磐越東線13:32江田着    
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 所要時間は4時間42分に短縮されるが、到着時刻は同じである。
 東北新幹線を使えばどうか。
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■六会日大前10:21発小田急江ノ島線◇藤沢[11分待ち]東海道本線◇東京[8分待ち]やまびこ49号◇郡山[21分待ち]磐越東線14:31江田着 
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 所要時間は4時間10分。わずかに改善されるが、到着が59分遅くなる。
  理由は後で述べるが、これではその日のうちに背戸峨廊に入れない。


 5月ともなれば日が長い、空は抜けるように青い。ちんたらちんたら、13時32分、2両編成のディーゼル・ワンマンカーが江田駅に着いた。下車したのは我々のほか若者1人だけ。


 無人駅で、小さな待合所はあるがホームに屋根はない、トイレもない、自販機すらない。
 その昔ここは信号所で列車交換(行き違い)をやっていたらしい。単線なのにどうやって列車交換をしたかって? 
 興味のある方は《まったり駅探訪 https://ameblo.jp/aru-king/entry-11298061332.html》をご覧ください。
 福島県道41号を隔てて「■■朝日屋」と看板、駄菓子やアイスクリームを売っている。小父さんに荷物を預かっていただけないかと申し出ると、「いまはやっていない食堂があるから置いていきなさい、気をつけて行ってらっしゃい」。「■■」には食堂と書いてあったらしい。
 朝日屋を出発して、すぐ右に駐車スペースがあって公衆トイレ、その先に「背戸峨廊入口」の看板、磐越東線のガードをくぐるとすぐに江田川沿いの道になり、13時58分駐車場広場の登山口に着く。《背戸峨廊》の命名者・草野心平直筆の石碑が出迎えてくれる。


 案内板に曰く、《入山される皆さんへ……1周には、約4時間半かかります。山の日没は大変早いので、入山時間は厳守してください。……〈入山時間〉春・夏 午後2時まで 秋・冬 正午まで 》
 さいわい制限時刻までまだ2分ある、いざ出発。
 初めのうちは渓流右岸の岩を削って歩道が造ってあり、小さな滝を迂回していくと東屋もある。


 20分も歩くと落差10メートルのきれいな滝が現れる。トッカケの滝である。

 向かって滝の左の緑の合間に3連のアルミ梯子がみえる。まずこれを登る。


 さっきの案内板には《初めて背戸峨廊に入られる方は、無理をしないで「トッカケの滝」を目標にしましょう。》とあったので、ここで3点支持の原則を講義。
 右手左手が2点、右足左足が2点を合わせて4点、両手両足で身体を支えます。身体を移動させるときには、3点で身体を支えたまま、移動する方向に1点だけ伸ばして、体重を移動させます。
 みなさん飲み込みが早い。3連のアルミ梯子が終わるとちょっと左にトラバースし、さらに鎖付きの鉄梯子になるころには、上体を起こして登ってくる。
 身体を硬直させ梯子にしがみついているようだと、引き返してもらうほかない。
  ここから基本的には、両手を振って歩ける登山路はなくなる。水流で抉られた岩盤のでこぼこを上ったり下ったり、垂直の岸壁に飛び飛びに続いているステップを伝って行くことになる。もっとも壁には鉄の鎖が延々と張ってあるので、技術的に難しくはない。身体を鉛直に立て、鎖をつかんで心持ち身体を岸壁から離せば、ステップが沢側に傾いていてもまずスリップすることはない。 


 登山路のすぐ脇を奔流が流れ落ちている釜ん淵を過ぎると、水流が緩やかになって珍しく河床に砂がたまっている。と思ったら流木の山である。


 アルミ橋で左岸に渡ると、ステップが小さいへつりが続くようになる。鎖の扱い方が分かってきたようで、カメラを構えると、手や脚を上げてポーズの余裕すら出てくる。ボルダリングの技術はまだ教えていないんだがなア。 

  
 このあと右岸に渡り、左岸に渡り返しているとる、水流が扇形に分かれる片鞍の滝に出る。


 滝の右に長い鉄梯子があるが途中2カ所にガムテープが下げてあるので、ピンクのマーキングに従って、その右のガレ場を登るとクロスして左向きの鉄梯子あり、この繋がりが慣れない人には難しいのかもしれない。


 背戸峨廊に入って1時間40分、右に傾斜した大岩盤を流れ下る滝がある。龍門の滝である。


 ここは向かって左、右岸に回り込んで続く斜めの長い岩盤を鎖伝いに登る。


 それからも左岸に渡り、右岸に渡り、くねくねと続く5連の梯子を登ったり、下り梯子は後ろ向きで下りたり、16時30分、三連の滝が見えてくる。


 本日の沢登りはここでおしまい、ここから沢筋を離れて急坂を尾根筋に出る。ゆっくりコースは緩い尾根道で、路面に石ころ一つない歩きやすい土道である。

 17時44分入り口の駐車場を通過、17時53分朝日屋に帰着。所要時間4時間05分也。

 
 驚いたことになんとこの小父さん、疲れたでしょうと言いながらお茶の接待をしてくださる。

 素晴らしい峡谷美を愉しみ、充実した沢登りに満足して帰ってくると、阿武隈の人のやさしい心遣いが待っていたのである。
 ゆうゆうあぶくまラインには、もっと時間をゆったりとって、また来てみたいものである。
 列車は6時10分江田駅発、6時33分小野新町駅着。同35分には駅前の旅館・西田屋支店にチェックインすることができた。

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