村山古道巡視 20年その3

 富士山麓山の村の緑陰広場の向こう端から右に日沢(にっさわ)を渡って、ヒノキの植林地の溝道をたどる。ここは歩きやすい平らな土道であったが、この向こうに広がる扇形の流域に降る雨がぜんぶこの窪みに集まるために年々掘り下げられて、両側が崖のようになってきた。

 この写真は昨年7月7日のもので、まだまだ楽に歩くことができる。
 ところが今年はどうだろう。

 浮き石が重なって、まるで沢筋を歩くような感じになってきた。一雨ごとに浮き石が動いて足許が安定することはない。登りはともかく下りにとると、足首捻挫の危険性すらある。右の写真にみるように段差の位置はどんどん後退して行くばかりである。
 われわれはこの地点でこの溝道の底は諦めて、左の高みを歩くことにした。そこはこれまでも多くの人が歩いているらしく無数の踏み跡がある。
 この道にはいったら適当なところで高みに上がればいい。溝道から離れないよう踏み跡を繋いでいけば、間もなく幹周り5メートルのミズナラの老木がある。その先の枝を切り刻んだ倒木をまたぐと馬頭観世音の石像まえに出る。そこからはしっかりした踏み跡になる。
 大淵林道を過ぎたところで左折して日沢を渡ると少し傾斜のついた土道になる。ここも雨水による路面の削られ方が目立ってきた。これまで30年間、びっしり植林されたままいっさいの手入れをされないできた左(西)のヒノキ林が、間伐されたのである。

  この写真をみると間伐というよりは皆伐採といったほうがいいかもしれない。

 この写真の左は去年の6月22日に補強した土嚢のダムである。すこしでも雨水の流れる勢いをそいでおきたいと思ったのである。    ところが今回いってみると、土嚢がごっそり押し流されている。鉄砲水のような濁流がおしよせたのだろうか。
 下から登っていくと分かりにくいのだが、さらに右側(東)には南北にずんと貫く防火帯が設定されてしまった。

 この写真の右から左に横切っている溝が村山古道である。
 この部分に草が生え灌木が育って保水力を持つようになるのが先か、新たな土石流の発生源となってすぐ下の登山道を埋めつくし押し流してしまうのが先か、ちょっと見当がつかない。

 中宮八幡堂は、いまやバイケイソウの王国ながら無事である。水平を気にして注意深く見ていただきたい。石柱がちょっぴり左に傾いているのにお気づきだろうか。
 押して直そうとしてもびくとも動かない。これは2011年の3・11の4日後、この地下10キロで発生した直下型地震の被害である。富士宮市では震度6強、地面が東西に揺れ動いたことを示している。
 日沢の氾濫で岸が削られて流されるのではないかと危惧された水神と八大竜王は、左岸高みに移転して無事である。

 日沢に下りる経路は、炭焼き窯跡のすぐ上のトラロープ口、さらにその上に最近造られて蛇籠目指して下るルート、村山古道の日沢徒渉点の3か所があるが、いずれも河床部分が水流で削られてハングしている可能性があるので、注意が必要である。
 日沢を渡ると不動沢熔岩流地帯となり、路面が雨水で削られる心配はなくなる。両側とも一面の苔である。
 女人堂跡を過ぎ、間もなくスカイライン横道に着くという右側に、「西河原 六観音」(『富士山表口南面路次社堂室有来之次第絵図』嘉永4年)に比定される遺跡がある。
 
 ぐるりと囲んで残っているのは建物の礎石、左隅の凹みはその昔のトイレ跡ではないかと言われている。その筋の専門家に分析してもらえば、往時の食生活の実態や修験者が飼っていた寄生虫が分かるかもしれない。
 ところがご覧のように、その貴重な部分から、流れてきた土砂に埋もれようとしている。原因は静岡県道表富士周遊道路、すなわち富士山スカイラインからの排水である。
 じつは以前からこの心配があったので、3年前の7月の末、遺跡の左上の熔岩塊のあいだに土嚢を列べて土砂の流入を防いでおいたつもりである。18俵使った。そのさいせっかくの苔蒸した熔岩流の景観を損ねないよう、わざわざ黒い土嚢を買い求め、岩陰や倒木の後ろに配置したから、登山道からは見えない。その堤防が満杯になったのかもしれない。
 スカイラインからの排出口がこの写真。
 
  左の写真の上端に斜めに見えるのがスカイライン。雨が降るとこの上の孔から噴水のように泥水を吐き出す。
 孔のすぐ上、谷側のL型側溝はなめらかで雨水は路面を流れるだけである。孔からたどった道路の反対側が右の写真。スカイラインの山側のL型側溝を流れてきた雨水の大部分がこのグレーチングの隙間に流れむ。

 距離があるから雨脚が強いときにはたいへんな水量になるだろう。
 この排水孔の位置がスコリア地帯であれば何とかなるのだが、苔蒸した熔岩流地帯であり、貴重な遺跡のすぐ上であるということが、問題をむずかしくしている。

コメント

畠堀操八様
村山古道の点検、補修、いつもお疲れ様です。
自然林ではなく、人工林の区域は風雨の影響を受けやすく、ダメージも大きいようですね。
日沢の流れが変わったため、ギリギリにあった水神や八大竜王の碑が避難され、今は無事なのは良かったです。
これからも道普請は続きますね。お疲れ様ですが、よろしくお願いいたします。