乱丁 その1 『富士の人穴雙紙』

 全国のコロナ緊急事態宣言が解除されたまさにその日に、わたしは病院に軟禁された。

 コロナ感染ではなく白内障手術のためである。2泊3日で脱出できたが、禁酒1週間・登山禁止1か月という保釈条件が付けられた。
 小池東京都知事の倫理観や職業差別意識を滲ませたような場所に出入りしないわたしは、これまで日常生活にさほどの制約は感じなかったが、これからはしばらくは来し方を振り返ってみようかと思う。まず最初のテーマは「乱丁」。

《らんちょう ‥チヤウ【乱丁】書物のページの順序が綴じ違っていること。「−本」→丁(ちよう)5》(『広辞苑 第四版』新村出編、岩波書店、1991年発行)

 

 先日、ムラヤマフジコチャンから『富士の人穴雙紙』(富士市立中央図書館編・発行、平成20年)を読んでいて文章が繋がらない個所があるという連絡があった(Amebaブログ(「一人、“地下鉄の地上を歩く会”」のうち、2020年5月15〜16日の《富士の人穴雙紙1〜2》参照)。
人穴というのは富士山西麓にある奥行き90メートルに及ぶ熔岩洞窟で、戦国時代末期に、藤原角行が修行して富士講を開いたといわれる聖地である。
 時代はさかのぼって鎌倉幕府2代将軍・源頼家は和田平太に人穴探検を命じるが、穴の外に追い返されてしまう。そこで応募した仁田四郎が、知力と胆力でもって穴に入り込み、地獄巡り・極楽巡りをするという仏教説話である。

 ウム、ツンドク本はわが家にもある。開いてみると、たしかに通じない。

 

《さねば、鬼共が申しけるは、
「かほどに罪深き者共をさように御待ちあらんには、いつ迄待ち申すべし。》(96亘尾)
《「如何に、仁田承れ。善根をするとて、心に染まぬ者が鼻に釘を打たるるなり。また、男の善根いたす女房が腹を立ち『無益』などと言う、そ……》(97亘粗)
《くとして鮮やかなり。花の輪、四方の梢を並べ、異香薫じて面白き事、言葉にも延べがたし。
「佛のつぼを見せん。」》(97亘尾)
《受け取り申さん。」
と声々に申す。》(98亘粗)
《と申せども叶わず。作りし罪の報いなれば地獄へこそ落とされけり。
大菩薩聞し召し、》(98亘尾)
《とて、阿弥陀のつぼ・釈迦の住処・薬師の住処・勢至の住処・地蔵の住処とて、仏の住ませ給う所をいちいちに拝ませ給いけり。》(99亘粗)
 
 でもこのパズルは簡単である。
 97ページの次に99ページを読み、そのあと98ページを読めば、あっさり99ページに繋がっていく。

 98ページと99ページを裏返しにして製本しなおせばいいのである。
        

コメント