乱丁 その3 書籍印刷の面付け1

 なぜ乱丁という混乱が起きるのか。それを考えるまえにまた脱線して紙に印刷するということについて考えてみよう。
 まずは1ページずつ印刷ということ。
 こういう古い本がある。

 著者は小島烏水。といえば日本近代登山の先駆者、日本山岳会の初代会長、書名は『日本アルプス』。第1巻が明治43年7月の発行、第2巻が明治44年7月、第3巻が明治45年7月、第4巻が大正4年7月の発行である。
  当時の印刷技術・製本技術の贅を尽くした豪華本である。
《『日本アルプス』全四巻は、……その内容とともにそれにふさわしい装幀・挿画・写真・図版・造本などを考えあわせると、わが国の出版文化史のなかで画期的な名品であったといえる。》(近藤信行「小島烏水『日本アルプス』全四巻」『覆刻 日本の山岳名著 解題』日本山岳会企画・編集、大修館書店制作・刊行、昭和50年)
 それをいちいち解説しているときりがないので、いきなり第1巻150ページを開いてみよう。

 対向ページに「第五圖版 精進湖より仰げる白峯三山(ウオルタ アウエストン氏)」の写真と「第六圖版 農鳥山の鳥形残雪(野尻正英氏スケッチ)」が紺色インクで印刷されている。
 わが国で、紙の上に写真製版の印刷ができるようになった初期の作品というべきである。感光剤に反応させたのではない。
 その裏はどうなっているか。

 真っ白で、何も刷ってない。そして対向ページが151ページになっている。
 つまり、この写真ページは本文とは別格、1ページずつ、表だけ印刷されてここに挟み込まれたものである。紙の上に写真版印刷という技術がたいへんデリケートでむずかしものだったということが伺われる話である。
 今日書籍では、よほどの大型本でなければ、1ページずつ印刷されることはまずない。
 

コメント

「日本アルプス」 
本そのものが芸術品ですね。
表紙の絵も気になります。一巻々々違う画家が担当しているようですが・・・。
実物を手に取って見たいと思いました。

  • ムラヤマフジコちゃん
  • 2020/07/24 14:34